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どちらを、許さないのか。けれどあそこで放置して紅葉がどうにかなるくらいなら、助けてやった方がいいと思ったのだ。チッと大きな舌打ちをして早く寮へ、と再び意識を戻した。
…そのときだ。横の森から声が聞こえ、走り去っていく足音が桐の耳に入ってきた。桐は一旦足を止め、そちらを睨みつけるように見つめる。そして人が向かっていったであろう方向へ、足を向けた。
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「はぁっ、…は、クソ、いねぇ…っ」
桐にしては珍しく息を乱しながら、木に手をかけ、息を整えながらあたりを見回して耳を澄ませた。
人の声を追って森の中に入ったはいいが、その森はあまりにも広すぎた。広く、そして複雑で。注意を払って探しているにも関わらず紅葉は見つからず、あそこに見える鉄の柵は学園の敷地がそこまでということを伝えている。
「…チッ、ぜってぇ見つけて俺様に感謝させてやる…っ」
だから、だから…っ。その先は声には出さなかったが、きっと誰よりも紅葉のことを心配しているのだろう。その柵に平行になるよう走り出し、そしてやっと聞こえてきた声に、身を潜めた。
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