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『殴ってからじゃキタネーな』

『終わったあとでいいだろ』

『むしろヤりながら殴るとか?』

『ははっ、ドMになりそうだなそれ』

『あーいい。もっとイジメてぇーとかいわれたい』

『バッカ、喋れねーし』

『…あ、声聞けねぇのか。つまんねぇ』



(ヤ、ダ…ッ、怖い、若ちゃ、若ちゃん…っ!)


 逃げだそうとした。けれど腰が抜け、ズリズリと体を這って逃げることしか出来ない。だがそんなものすぐに捕まってしまい、地面に押さえつけられてしまった。

 腕を1人の男に、体の上にもう1人、そして横に最後の1人。あの親衛隊の子は近くで無表情のまま成り行きを見ているだけ。紅葉は体を震わせてまた、大粒の涙を流した…。







 上から見たのは、あの黒い、ふわりと揺れる髪だけだ。だが桐はそれをすぐに紅葉だと気づき、横にいるのが菖蒲たちではないことも理解した。あれは、親衛隊だと。

 なぜだろうか。そう思った瞬間に、体はもう動いていた。



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