チュンチュン
大きなTシャツに、半分ずり落ちているズボン。ボサボサの髪でサクサクと砂浜を歩き、紅葉が近寄ったことで必死に横へ逃げるカニを見つけ、ふにゃ…っと笑顔を見せた。
「(おぁよう、カニさん)」
まだ寝ぼけているのか、声が出ないことを忘れて口を動かす紅葉。そしてそのまま海へと目線を移動させ、反射する光に眩しそうに目を細めた。…と、
「……おい、朝から投身自殺でもするつもりか? あ?」
「………、…?」
「チッ、…こっちだこっち。一回で分かれバカ」
「……(グッ、…コテ)…ぁ」
「……何してんだマジで」
声をかけてきた桐は、2階の部屋の窓から紅葉を見つめていた。それを見つけた紅葉は首をあげたまま近づき、そして見上げすぎて尻餅をついたのだ。
ハンッ、と鼻で笑う桐に、紅葉はようやく目が覚めてくる。
(…あれ、外におる…)
「あーおったー!もー目ぇ覚めたらいないからビックリしたでーっ」
「……っせぇ、朝から大声出すな」
「お、はよーさん。今日の朝飯はなんやろねっ」
「知るか。…おい、ちゃんと砂払ってこいよな」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!