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 ふぇ、と紅葉の顔が歪む。桐が急かすものだから携帯を置いてきてしまったのだ。今にも泣きそうな紅葉を見て桐はうっと息をつまらし、自分の携帯を投げるように渡した。

 紅葉は痛い、と悪態をつきながらも、それを使ってどこかに出掛けるのかと質問した。


「じゃなきゃ荷物なんて詰めねーだろ、バカか」

「(む…っ)」
【バカやない!1人でやればいいじゃんっ】

「あ?暇人が何いってやがる」

「っ…、…」

「な、んだよ…」

【…僕、は…寮に帰る、の?】


 寂しいよ、という思いを込めて桐を見つめる紅葉。少し尖った口は拗ねているのか、桐はそれを見て面を食らった。桐の中では紅葉もいくことが決定事項だったのだ。そんな顔をされるなんて、思ってもみなかったのだろう。


「……んなに、1人は嫌かよ」

「…(コク)…」

「ったく…ガキだな。しょうがねぇからテメェも一緒に連れてってやるよ、…海」

「…?(う、み…?)」

「海だ。嫌とはいわせねぇ」


 上から目線な桐だが、その意味をようやく理解した紅葉は、パァッと花のような笑顔を咲かせた。



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あきゅろす。
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