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「っぁ、──……」
(声…出て、ないんやった…)

「………大、丈夫。アヤメ、分かる」

「っ…?」


 どういう意味?と蓮見に視線を送ると、蓮見は菖蒲を睨みつけていた。確かに声は出ていないし、読唇術を持っているわけではないので、紅葉が何をいってるか正確には読み取れない。

 菖蒲はだからこそ、申し訳なさいっぱいで首を傾げたのだが、蓮見には十分伝わったらしい。それを受け、菖蒲もやっと納得し、目線を紅葉に合わせて綺麗な笑顔を見せてくれた。


「どういたしまして。でも、ほとんどが紅葉の努力の結果だよ」

「っ──」

「え…も、紅葉っ?」

「な、…泣かした…っ!」

「違っ、嘘、ごめんね泣かないで?」

「(フルフル…)っ、ふ…」


(ちゃうの、に…っ、泣くつもりや、なかったのにぃ…っ)


 けれど溢れ出てくる涙に、紅葉は焦って袖でごしごしと目を擦った。悲しいわけじゃないのだ。ただ、ビックリして、嬉しくて。

 どうして2人はいいたいことを分かってくれるんだろう…と、ほんとにただ嬉しくて、感極まってしまったのだ。



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