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「……?わかちゃん、だいじょぶ?」
「へ、平気や…」
「あのね、これ、わかちゃん!」
「ぇ…え、ワイ描いててくれたんっ!?」
「じょーず?じょーずっ?」
「上手や、うまいわっ!嬉しいわーっ!!」
それは決して上手いとはいえない、5歳児の描いた落書きだけれども。頭が黄色のこの人は、大きく口を開けて楽しそうに笑っていた。その紙を持つ若葉の手は震えていて、俯いたまま何もいわない。
泣いていると思ったのか、紅葉はその金色の髪を撫でてあげた。
(ホンマ、紅葉は最高のワイの "子" や…っ!)
例え血は繋がってなくとも、紅葉は大事な大事息子なのだ。ちょっと甘えん坊で、でも人を思いやる気持ちをもう持ち始めている紅葉に、思わず一筋の涙を流してしまったのは…絵だけが見ていた秘密だ。
◆
『よーい…ドンッ!』
──ワッ
「いっけぇ紅葉!そこや、抜けぇえっ!!」
ビデオカメラ片手に身を乗り出して叫ぶ若葉。その前を必死に走り抜けていく紅葉。
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