[携帯モード] [URL送信]

「……?わかちゃん、だいじょぶ?」

「へ、平気や…」

「あのね、これ、わかちゃん!」

「ぇ…え、ワイ描いててくれたんっ!?」

「じょーず?じょーずっ?」

「上手や、うまいわっ!嬉しいわーっ!!」


 それは決して上手いとはいえない、5歳児の描いた落書きだけれども。頭が黄色のこの人は、大きく口を開けて楽しそうに笑っていた。その紙を持つ若葉の手は震えていて、俯いたまま何もいわない。

 泣いていると思ったのか、紅葉はその金色の髪を撫でてあげた。


(ホンマ、紅葉は最高のワイの "子" や…っ!)


 例え血は繋がってなくとも、紅葉は大事な大事息子なのだ。ちょっと甘えん坊で、でも人を思いやる気持ちをもう持ち始めている紅葉に、思わず一筋の涙を流してしまったのは…絵だけが見ていた秘密だ。







『よーい…ドンッ!』

──ワッ

「いっけぇ紅葉!そこや、抜けぇえっ!!」


 ビデオカメラ片手に身を乗り出して叫ぶ若葉。その前を必死に走り抜けていく紅葉。




[*前へ][次へ#]

36/100ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!