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「けむりのにおい、するよ…?」
「……あ゙、せやな…堪忍な。シュッシュしてくるわ」
「はーい」
イヤイヤと頭を振る紅葉に、今日は臭い消しをするのを忘れたことを思い出した。若葉は吸わないのだが、事務所の方はタバコの煙が充満しているのだ。
嫌でも臭いがついてしまい、若葉自身それを嫌って臭い消しを毎日していた。
それを終えて戻ってみれば、机の上で絵を描いている紅葉が目に入る。ぐりぐりと楽しそうに描く姿に目を細め、若葉は家事をしだした。今日も今日とて、椎名家は平和である。
「まいごのまいごっ、こねこちゃんー♪あにゃたのおうち、はっどこ、ですかっ♪」
「……」
「……にゃんにゃんにゃ…にゃーんっ、にゃん、にゃん、にゃにゃーん♪」
「うまいなー紅葉は。しかも最後まで歌えたやないかっ」
「にゃーんっ、おおきににゃ」
「ぶ…っ!」
歌を一曲歌い終え、若葉は手を止めて力いっぱい拍手した。そしたらどうだろう、満面の笑みと猫語で返してくるではないか。
あまりの可愛さに若葉は吹き出してしまった。親バカなのか変態なのか、微妙なとこである。
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