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「そんなんでエエんやろか…?」
『ワシがエエゆうとるんや。他の奴に何かいわれたらそうゆうときぃ』
「はぁ…分かりました」
『くれぐれも他の仕事には手ぇ出さんようにな』
「……ッス」
戸惑いはあるものの、自分が望んだ仕事がようやく出来るわけだし、確かに紅葉がいなくなって暇を持て余していた。それに、目の前の人の言葉を逆らうだけの勇気も術もないのだ。
若葉は頭を下げてその場を去り、早速事務所へ向かった。といっても任されたのは金庫管理や書類整理などの雑務だったのだが。
◆
「ただ、いまーっ」
「おー手ぇ洗えよー」
「わかっとるもんっ」
「分かっ"てる"、や」
「むぅ…わかちゃん、いじわるやっ」
いーっと若葉にして見せ、洗面所へ走っていく紅葉。5歳にもなると言葉もハッキリしてきて、若葉は嬉しそうにその背中を見送った。
ただ、どうしても自分の関西弁を覚えてしまうようで、そこだけは何とかしたいと常々思っているのだが。
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