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決して口には出さないが、心の中で思うくらいはいいだろう。若葉は怪訝そうにしながらもスーツに着替え、髪も簡単にだがセットした。しっかりカギをかけ、男の車で組長のもとへ向かう。
組に入ってもう4年。家で出来る雑務はやってきたものの、こうして出向くのは本当に久しぶりだ。若葉は何をいわれるのかとドキドキしながら、組長と顔を合わせることになった。
『急にすまんのぉ椎名』
「や、平気です」
『そろそろ、ちゃう仕事も頼もうか思てな。他んのとは勝手がちゃうさかい、ワシから呼び出させてもろたわ』
4年経った組長は、微かだが貫禄が見えだしてきていた。だがやはり紅葉のことは話題に出ず、若葉はついつい眉をしかめてしまう。それに気づいているだろうに、組長は話をさらに進めた。
要は、紅葉が幼稚園に通って時間が出来るようになっただろうから、こちらの方もやれとのこと。特別枠の新人扱いとして、家の近くの事務所で雑務や取り立てなど。
もちろん子供優先にしていいし、時間も若葉の自由でいいと。オイシイといえばオイシイが、少し戸惑いがあるのも確かだ。
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