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だから可哀想にと頭を撫でれば、紅葉の顔はクシャッと歪んだ。
「ツラいときは、泣いてエエんよ」
「うん、紅葉は泣く権利があるっ」
「ガマン、……ダメ」
「っ…ふ…(うぁ、あああっ!)」
((また椿(先輩)…?))
全ては、椿が若葉にそっくりだから。泣いていいんだといわれた紅葉はソファーの背を間に挟みつつも、椿に抱きついて泣き出してしまった。
そんな紅葉をよっと持ち上げ、抱き上げてからソファーに座る。すると紅葉は手を椿の首に回し、肩に顔を埋めて本格的に泣き出した。
「っ…!っ──!」
大泣きなのに、声はしない。だが椿は肩が濡れていくのにちゃんと気づき、優しく背中を撫でてあげる。それに伴いみんなも頭を撫で、声をかけ、出来ることをしてあげようと試みた。
ぐず、ひっくと時折聞こえる音。声も出せずに泣く姿がこんなにツラいものだというのを、ここにいる人たちは初めて思い知らされたのであった…。
「チッ、……おい、そのケータイ貸してみろ」
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