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それがまた、紅葉を困らせる。後ろから抱き締めて椅子に座り、離してくれないのだ。だから紅葉にとって蓮見が来るまでの10分間が、唯一の時間になってしまった。
『ねぇねぇ、椎名くーん』
「……?」
『僕と一緒に荷物とりに行ってもらってもいーい?』
「っ、(コク!)」
紅葉の気持ちを知ってか知らずか、この10分間にクラスメイトは声をかけてきてくれるようになった。今も紅葉のように女の子らしい容姿をした子に話しかけられ、紅葉は満面の笑みで頷いて教室を出て行く。
(1人じゃないからええ、よね…?)
その、もう1人が誰なのかもハッキリしないまま、だったが…。
そして紅葉たちが出て行ってから10分…いや、7分後、いつものように蓮見がやってきた。ノックもなしに開けられる扉の音に、何人かがビクつき振り返る。そして彼を見て、クラス中に緊張が走るのだ。
((こえーっ))
(何で今日は睨んでくんだよ!)
(カッコイい…けど怖くてムリー!)
「……モ、ミジ…?」
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