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(……なんや、家、こないに静かやったんか…)
あっちへこっちへ走り回る紅葉がいなければ、歌うのが好きでテレビのマネをする紅葉もいない。幼稚園に行ってるのだから当たり前なのだが、なんだか無性に寂しくなるのは、もう紅葉の "父親" だからだろうか。
散らかっている服を片し、ゴミをまとめ、水回りを綺麗にする。それを全てやってもまだお昼前で、若葉は暇つぶしに買い物に出た。今日はどうやら久しぶりのレトルトお昼になりそうだ。
◆
「おっ、もーみじーっ!」
「はぅ、わかちゃ…っ、わ、かちゃぁあーっ」
「よしよし、よぉ頑張ったなぁ…っ!」
「ふぇぇぇ、わか、ちゃ…ぁっ」
自分を見つけて泣きながら走ってくる紅葉を、若葉は大きく手を広げて迎え入れた。初日、1人になるのはとても寂しかっただろうに、紅葉は最後まで頑張ったのだ。
頑張ったあとはたくさん誉めてくれるのを知ってるから、幼いなりに必死に頑張ったのだ。
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