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 他は水を打ったように静かになったが、後ろからついてきていた菖蒲はさらに溜め息をつく。今ので紅葉が更に敵対視されただろう。

 …たとえ、桐が知らずのうちに紅葉のためを思って黙らせていたとしても、だ。


(泣いてた…でも、凄いこの人…)

「おら来い。腹減ってんだよ、俺様も」

「っ、(わ…!)」


 ポヤーッと見つめていたらまた腕を引かれ、ようやくたどり着いた席に座らされる。紅葉の右に桐、前に蓮見、斜め前に菖蒲だ。

 紅葉だって次のランキングには入るだろう可愛らしい容姿をしている。…その4人は、絵のように違和感なく、宝石のようにキラキラしていると、残ったほとんどの人がそう思っただろう。


「……おら、早く頼め」

「……?っ、(フルフル)」

「俺様が仕方なくおごってやるんだ、早くしろ」

(ええん、かな…?)


 メニューのタッチパネルを押し付けられ、紅葉は困ったように桐を見上げる。その瞳はいつもよりもウルウルと潤んでいて、間近で見つめられた桐は少し体をそらした。

 だがすぐニヤリと笑い、紅葉の顎に手をかけて、顔を近づける。



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あきゅろす。
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