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スルスルと腰から脇をイヤらしく移動する手に、紅葉は眉を垂らしつつも身をよじり、そして笑った。ずいぶん敏感だな、なんて思いながら椿はニタニタしながら続ける。
…が、菖蒲と桐からの突き刺すような視線に、手を止めた。それと一緒に紅葉も動きを止め、椿のシャツをキュッと握りながらハァハァと息を繰り返す。
その姿は、菖蒲ですらドキッとしてしまうものがある。
「(ぷくー…っ)」
「ははは、スマンスマン。なんや、紅葉チャンって苛めたなるんよ」
「(プイッ)」
「……ぷっ、椿嫌われたぁ」
「うぁーそらオニーサン悲しいわ。菖蒲チャンとこいってエエから、嫌わんといてな?」
…で、いつかは味見させてね?なんて思ったのはみんなには秘密だ。紅葉の脇に手を差し込み、ひょいっと持ち上げて頭を撫でてあげる。そして椿は桐がキレる前にと仕事を再開しようとした。
……のだが。
──…クイッ
「……んぁ?…へ?」
右手の裾を軽く引っ張られ、作業は始まることなく中断してしまう。そちらを向けば目をウルウルさせた紅葉が自分を見ていて、思わずキスしたくなるほど寂しそうな顔で見つめていた。
…もちろん、キスはしなかったが。
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