6
とはいっても20年間これできていたのだ。今更変えられるはずもなく、そのたびに言い直していた。若葉はどう育てていくつもりなのか、紅葉にはなるべく標準語を覚えさせようとしているらしい。
以前、"ワイ" と喋った紅葉に相当なショックを受けていた。
「紅葉ーようけ食って立派な男になるんやでぇ」
「ん、あい!」
「ついでにほら、若葉てゆうてみ?」
「わかちゃ?」
「……わ、」
「わっ」
「かぁ」
「かー」
「ば!」
「ちゃっ!」
「……もうエエわ…」
そのうち言葉をハッキリ覚えれば呼ぶようになるだろう。なんて考えながらもう一口オムライスを頬張った。ケチャップの多いとこに当たったのか、少し眉を寄せていたが。
「キャハハッ、ちゅーちゅー、ほしっ」
「ちゅー…水か。今オレンジ入れてきたるわ」
「うっ、ふぇぇ、わか、ちゃ…ぁっ」
「へ…な、何で泣いとんねん!」
「ひと、り、やぁ…っ」
「あー…そこやそこ。見えるやろ?」
「んく、うぅー」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!