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 果たして、今言い聞かせていることが紅葉にちゃんと伝わっているだろうか。まだ眠そうな瞳でフラッと立ち上がり、紅葉は自ら2人の手を握った。

 そして、へにゃりとした笑顔を見せてくれる。


「……このまま食堂いくのも危ない気が…」

「モ、ミジ……起き、て」

(んむぅ…)







 なぜ、食堂での接触があったのにも関わらず、紅葉への制裁がなかったのか。それは紅葉自身の容姿もあるし、菖蒲がそばにいるということもあった。何よりも、蓮見の存在は大きかったのだ。

 だから影でコソコソいう人がいても直接的なものはなく、一番ターゲットにされやすい下駄箱も今の学園にはない。そのためあのままいけば桐の気の迷いだった、で済んだのだが…。


(問題集も必要やったんやぁ…っ)


 もうチャイムが鳴ってしまう、というときに廊下をパタパタと走ってくるのは、化学の問題集をとりに教室まで戻ってきた紅葉だ。

 あいにく菖蒲は生徒会補佐の仕事で忙しく、蓮見がわざわざ理科室まで送ってくれたのだが、紅葉は忘れ物をとりに戻ってきてしまった。



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あきゅろす。
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