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 あれから1時間ほど経ち、桐の怒鳴り声によって緊張した空気は引き裂かれた。みんながみんな手を休め、そんな様子をみた紅葉は文句をいわずに一葉のあとをついていく。

 ちょこちょこと歩く様は小動物のようで、一葉と手を繋いだ姿も、2人して可愛らしいではないか。何よりもそんな2人に、蓮見と椿が一番癒やされていた。


「ここが給仕室なの。いっつも一葉がやってるんだぁ」

「(コクコク)」

「えへへ、紅葉くんホント可愛いね。いつか声聞かせてね?」

「っ…(コク…)」


(声、戻るのかな…)


 コップやコーヒー豆の場所を聞きながら、紅葉はふとそんなことを思った。医者には精神的なものはいつか治る、と教えられたが、紅葉はもう戻らないんじゃないかと、そう思っている。

 だから密かに手話の練習もしていたりするのだが…それはまだ誰も知らない紅葉の秘密だ。


「みんなコーヒー飲めるんだけど…砂糖とかの分量が違うんだよねー」

「ぁ…っ」

「へへ、覚えちゃえばラクだけどねっ。イラついてるときとかはわざと違う量入れたり、給仕係も結構楽しいよっ!」

「………(え、)」



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あきゅろす。
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