23 「……っと、わり、トイレ行ってくるから待っててくれ」 「あ、うん」 水族館の敷地を出る前に中へ戻っていくなんて、不審がられただろうか? だがそうしたのだって理由はある。水族館のお土産屋に戻り、……この1m近くあるイルカのぬいぐるみを買うためだ。 すげぇ物欲しそうに見てたからな…喜んでくれるといいが。 「瑛太、悪い遅くなっ…た…?」 い、ねぇ…?トイレか? それならいいが、胸騒ぎがする。 ケータイを手に少し待ってみるか、そう思って座れるところへ移動し、床に落ちてるものに気づいた。 ──…さっきのストラップ。 「……た、瑛太…っ!」 * * * 好きな人と、初めてのデートで水族館。なんて…なんて幸せな1日だっただろうか。 薄暗い中で、微かな光を浴びて泳ぐ魚は神秘的だった。 家で熱帯魚を見るなんてものよりも、より多くの種類がいた。 凄く凄く、楽しかったんだ。 多分、 きっと、 初めてだからとかじゃなくて、 辰巳……あなたが横にいてくれたから。 [*前へ][次へ#] [戻る] |