21 「……辰巳…やっぱ、やめた方が…」 「あ…?何でだよ」 「だって、黙ったままだし…」 「え?あ、……瑛太のこと考えてたんだよ」 「っ、ば、バカじゃないのアンタ!だったら早く入っちゃおうよっ」 「ああ、行くか」 チケットを買って中に入る。 中は少しだが薄暗く、こういう場所だからか人も少ねぇ。 ソワソワしてる瑛太の背中を押してやると、一番近くの水槽に走って近寄った。 「かわい…っ」 ……そういう瑛太の方が可愛いんだが、そう思うのは俺だけか? ほんとに、ちいせぇころから来たくて仕方なかったんだろう。 俺が知ってる水族館より何倍も劣るのに、瑛太は目を輝かせてジッと魚を見ていた。 その横にゆっくり近寄り、膝においていた右手をとってやる。 「ぁ…」 「んぁ?…怖いか、バレるの」 「う、ううん…辰巳は嫌じゃないの?変な目で見られるの…」 「瑛太となら大歓迎だ。ほら、次見ようぜ」 「……甘すぎ…」 聞こえてねぇつもりだろうが、バッチリ俺の耳に届いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |