29
ゴロゴロと転がり、キングが距離をとるために蹴って立ち上がる。
それに辰巳も続き、2人はまた睨み合った。
「っ…ああ、もう…っ」
あの目、かっこよすぎる。
体の奥から湧き上がってくるよこしまな気持ちを抑えるために、自分の体を抱き締めた。
オレはその鋭い目に、とうの昔に射抜かれちゃってるんだ。
はぁはぁと荒い息を整える2人。顔は所々傷ついていて、2人して口の端から血を流している。
服で見えないけれど、その下もケガがいっぱいだろう。
オレたちの、いわゆる青春の証。こんなことをいうのはこっぱずかしいけど、でもきっとそういうものだ。
「はぁ…次で決めてやる…!」
「チョウは渡さねぇ…っ」
ボロボロの体で2人はお互いへと走り出す。そして、右の拳に全てを託し、振り上げた。
そこからは、まるでスローモーションのようだった。
相手の顔へ一直線に向かう拳。
2本の腕はすれ違い、そして頬に当たる。
グッと歪む顔からは痛みよりも決意が伝わってきて、
次の瞬間には2人とも倒れていた。
シーンとなるオレたち。
呻く2人。
……立ち上がる、辰巳。
辰巳。
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