30 そういいながら、意識せずに弘樹の背中を叩いた。それはつまり、オレは弘樹にはもう普通に接してるってことだ。 そう、辰巳の前で、普通に。 「っ…瑛太、大丈夫か…?」 「あっ…ぇ、と、ビミョー…?」 「何いってんだよ、ちっとは進歩したじゃん。手ぐらいは……え、まだダメなのか…?」 「………ごめ、ん」 ごめん辰巳。 あなたに触れるのはまだ怖いんだ。 弘樹なら平気なのに、辰巳は少し怖いんだ。 きっとそれは、紫烏に対する恐怖じゃないなにかで。 目を伏せて小さく謝ったオレに、辰巳はとてもツラそうな顔をした。 オレが、そうさせた。 (うっそマジ…傷広げちまった!?) 「気にするな。少しずつ治ってきてるんだろ?」 「うん…はは、レイジに説教されちゃって」 「……あ゙?」 「目の前にいるのは誰なのか、ハッキリさせろ…ってさ」 今オレの目の前にいるのは、 愛しい愛しい辰巳。それ以外の誰でもないんだ。 なのに、なのになのに…っ! 「おら、メシ行こうぜ」 「あっ……うん。お腹空いちゃったよ…」 [*前へ][次へ#] [戻る] |