22 「じゃ、ホントありがとな」 「いや……お前、やっぱ笑ってた方がいいわ」 「えっ?」 「瑛太の目、細められると結構可愛いぜ?」 ──チュッ 「んなっ…!?な、な…っ///」 何だよ今のっ! 目尻に音たててキスとかおかしいんじゃないのかっ!? それにっ…… それに、辰巳だって笑うとかっこいいし結構可愛いと思うんだけどな。 その…狼が犬になる瞬間? みたいな感じか? 「……俺たちはまだ、ガキだ。ゆっくり一緒に歩いてこうぜ」 「ぁ…うん……って何それ」 「……金鶴さんの受け売りだ」 「やっぱり。アンタらしくないもんな」 「っせ、」 最後に頭を小突かれて、そのままタクシーに押し込められた。 バタンと閉まるドアの向こうでは辰巳がこっちを見ていて……少しだけど微笑んでいて。 オレはなんだかスッキリした気持ちで行き先を告げた。 そしてヘアピンをとって目を隠す。 オレの逃亡劇は一週間ちょいで幕を閉じたけど、これからは新しいショー…いや、オレの新しい人生の始まりだ。 その一歩を今、踏み出した気がする。 [*前へ][次へ#] [戻る] |