25 「にっ…逃げて、弘樹逃げて!」 「バッ、エータおいて逃げれるかよっ」 『そうそう、そっちも用あんだよな。最近妙にネコっぽくなってきたし』 「はあ!?」 『あの灰狼と別れたとなりゃ、絶好のチャンスだろ?』 ああ、やっぱそう見られてたんだ。 ついでに弘樹も、ヤな意味で狙われてたんだ。クイーン、アンタのせいだよそれは。 ジリジリと近寄ってくるそいつらに、オレたちはどうすることも出来ずにいた。 近寄って近寄って、そして手を伸ばして触れようとしてくる。 ………いや、触れた。 嫌だ、やだ、またあんなことされんの、ヤダ…ッ! 『大人しく…』 「ぃっ…やだぁああっ!!触るなっ…オレは、オレには辰巳だけなんだよっ、お前らがさわんじゃねぇ…っ!!」 『ぐぁっ!』 『ちょ、誰だよ黒蝶は弱いっつったやつ…!』 無我夢中に目の前の男たちを殴った。 紫烏に植え付けられた恐怖も、嫌悪も、気持ち悪さも体中を駆け巡ったけど、それよりも怒りと憎悪が前へ出てきたんだ。 ……自分より弱いやつだったからかもしれない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |