13 『……─チョウが…んと、?』 『わら……やったッス…!』 『……、…まはね…──から』 突然聞こえてきた声に、ゆっくりと意識が浮上していく。 でもまだ寝ぼけていて、ドアが開いた音もそんなに気にならなかった。 ……頬に、触れられるまでは。 「……チッ、また傷作りやがって…」 「でも見た感じ、酷いケガはなさそうだね。あの灰狼がケガしたっていうから、もっと酷いのかと思った」 「あれじゃないッスかー?蚊に刺されただけでも大事な恋人なら大怪我になる!みたいな」 「なんであんな奴…俺にしときゃいいのに」 「っ…ひ、ぁ…あ゙、やだ…っ!」 「……黒蝶?」 なんで? 何でなんでオレに触んのっ!? 嫌だ、やだ、触んないで…っ…もうこれ以上、オレに触れないで…! 「っ…嫌だぁああ!!嫌だ、はな、離して…っ、やぁああ゙ーっ!」 「っ、おい、黒蝶っ!?」 紫の、あのニヤニヤした下品な笑いが消えていかない。 目を瞑っても、耳を塞いでも消えてくれない。 嫌だ、触らないで。 何でコイツはオレを抱き締めてんの? ……気持ち悪い、怖い、助けて。 [*前へ][次へ#] [戻る] |