5 甘えすぎてしまいそうになる。 自責の念に押し潰されそうになる。 辰巳が悲しんでるのに、辰巳に責められてる気分になる。 ──汚い、と。 はは…なんて嫌な奴。 人のこと傷つけておいて、悲劇のヒロインのようなフリをして。 深く深く俯いたけれど視界は明るいままで、オレはヘアピンをとって前髪をおろした。 見えにくくなる視界。 ……ああ、この髪型が安心するなんて。 「……髪、おろしちまうのか」 「う、…うん」 「そうか。…ついたぞ」 カードキーを取り出してドアを開けると、音に気づいたのか弘樹が部屋から出てきた。 間近まで駆けつけてきそうな勢いに、思わず肩を震わせ、後ろに下がってしまう。 不審に思っただろう弘樹は足を止め、代わりに辰巳が近づいた。 「瑛太、疲れてるらしいからそっとしといてやってくれ」 「お、おぅ…大丈夫か?」 「ぅ、ん…心配かけて、ごめんね」 「んーまぁチームに入ってるわけだし、頬の傷作って帰ってきたときよりは俺も落ち着いてっけどさ」 「はは、ありがとう…」 [*前へ][次へ#] [戻る] |