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「……辰巳…やっぱ、やめた方が…」
「あ…?何でだよ」
「だって、黙ったままだし…」
「え?あ、……瑛太のこと考えてたんだよ」
「っ、ば、バカじゃないのアンタ!だったら早く入っちゃおうよっ」
「ああ、行くか」
チケットを買って中に入る。
中は少しだが薄暗く、こういう場所だからか人も少ねぇ。
ソワソワしてる瑛太の背中を押してやると、一番近くの水槽に走って近寄った。
「かわい…っ」
……そういう瑛太の方が可愛いんだが、そう思うのは俺だけか?
ほんとに、ちいせぇころから来たくて仕方なかったんだろう。
俺が知ってる水族館より何倍も劣るのに、瑛太は目を輝かせてジッと魚を見ていた。
その横にゆっくり近寄り、膝においていた右手をとってやる。
「ぁ…」
「んぁ?…怖いか、バレるの」
「う、ううん…辰巳は嫌じゃないの?変な目で見られるの…」
「瑛太となら大歓迎だ。ほら、次見ようぜ」
「……甘すぎ…」
聞こえてねぇつもりだろうが、バッチリ俺の耳に届いた。
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