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2ー29
そう自己完結してご飯を食べるのを再開した。
……オレの周りってこんなに賑やかだったっけ、なんて思いながら。


自然と笑みが零れて、
ふと辰巳に向けた視線に、一気に体が冷めていくのが分かった。

温泉に入っていたところで、冷水を浴びた感じ。



「た…つみ、あれ…っ」


「あ?──っ、瑛太、下向いて普通にしてろ」


「来たかジョーカー…まさか本当に同じ奴だったとはな」


「お前ら、声はかけんな。気づいてねぇフリしててくれ」



そういって辰巳はオレたちのところからスッと消えた。
一応来れないってことになってるから、身を隠すんだろうけど…怖い。さっきの紫烏の姿が頭から離れない。


顔は隠しもせず、口はこれでもかってくらい弧を描いていた。
けれどバカにした目は隠せていなく、予想通り我が物顔で人の合間をぬって歩く紫烏。

紫系のチャイナ服が、イヤミなくらい似合ってた。



「違うことを願ってたんだけどね…」

「……チッ、殴り倒してぇな」


「お…おいエータ、大丈夫かよ…」


「っ…ごめ、もうちょっと…」



思わず掴んだ弘樹のツナギ。
手が白くなるくらい強く握り締めていることは自覚してるけど、どうしてもこの手を離すことが出来ない。

怖い、気持ち悪い。
アイツがすぐ近くにいて、……オレを探してる。



辰巳、




辰巳…っ、


早く戻ってきて…!




「真っ黒な蝶々はどーこかなー」


「ひっ…!?」


「真っ黒ドレスの蝶々チャーン」


「っ…」



コツ、コツと足を鳴らし、オレたちのすぐ横を過ぎていった。

幸いオレにもT-cardsにも気づかなかったようだけど、通りすがりに呼んでいたオレの名前に、背筋が震えた。


食べたものが戻ってきそうなくらい気持ち悪い。
立ってるのがやっとだ。



「黒蝶…んな苦手なのか?」


「さ、触るなっ!うるさ…っ」


「おいおい大丈夫かよ…チョー震えてんじゃん。顔色わりぃし…オレもあの喋り方、苦手だな」



ジャックが慰めるようにいってくるが、そんな言葉すら耳には入ってこない。




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