2ー23
オレは弘樹に便乗して、クマのツナギ。暖かいけれどこれがどうした、って感じのもの。
……あ、まさか黒のドレスとか思ってた?着ないから、そんなもの。
………辰巳にお願いされたら分かんないけど…。
「ギャース、ギャオオーッ」
「なっ…にしてんの、弘樹…」
「え?怪獣のモノマネ。エータはクマだからガオー、な」
「やだよ。…それよりも早く辰巳の迎えいこっ」
「へいへーい」
クマの格好っていってもツナギであって着ぐるみじゃないから、まぁまぁ動きやすい。
普通に靴も履けるし、手も出てる。フードは会場でかぶればいいし…よく考えたらお得な格好かも。
服の上から着てるだけだしね。
「よしエータ、脅かしてやろうぜ」
「……驚くかな…」
「いーからいーから、ほれかぶって…ガオーだぞ?」
「分かってるって。ん、早く呼んで」
──ピンポーン
チャイムを鳴らしてドアの前で待つ。
……っと、開いたときにぶつからないようにしないと。
なんて体をズラしたとき、ナイスタイミングでドアが開いた。
辰巳の体が俯いた視界に入り、両手を軽くあげて顔もあげつつ、吠えてみた。
「ガォオ…ッ、あ…」
「……ふっ、可愛いクマは誰を襲おうとしてんだ?」
「ぇ、あっ…た、辰巳…?」
「食われてぇの、俺に…?」
「ひっ…お、おかみ…」
顔をあげた瞬間、辰巳のその鋭い目に捕まってしまった。
食べられる、本能的にそう思うほど、今の格好…狼男の格好はしっくりきていた。
黒のスラックスに白のYシャツ。ネクタイはただ首にかけられてるだけで、金色のチェーンがまた何ともいえない光を放っている。
Yシャツにわざと付けられた血もヤバいけど、何がヤバいって…顔。
「ゲ、タッツー本物みてぇ…」
「何てったって、俺を狼にしたのは瑛太、お前だからな…」
「そ、そんな昔のこと…っ」
確かに、辰巳を初めて見たときは狼みたいだと思った。
……っていうか、そういったことを後から辰巳に聞いた。
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