2ー1
「はぁ…困ったな…」
「ぅ、わっ、クイーン!?」
え、どこから!?
てかいつの間にオレの横にっ!?
「クラスには勝ってほしい。でも弘樹くんには負けないで欲しい…黒蝶と灰狼が羨ましいな」
「な、んで…?」
「一日中、そばにいられるでしょ?……ああ、あんな一生懸命走って…可愛いなぁ弘樹くんは」
「………」
白という異様な目を弘樹に向けるクイーンは、どこかうっとりしていて少しだけ引いた。
でもごめん弘樹、懸命な姿が可愛らしく見えるのは…否めないや。
っていうかこの人、本気だったんだ。
「……単なる遊びだと思ってた」
「………え?」
「弘樹のこと泣かしたら、親友のオレが許さないから。…あ、辰巳いけーっ!」
じろりとクイーンに目をやると、ゴールに向かって走る辰巳が目に入った。
後ろから猛スピードでキングが追いかけてきてて、思わず叫んじゃった。
『人前ではしたないっ。静かに行儀よくしなさいっ!』
……ふふっ、学園でのオレはこんなんだって、お母様は知らないでしょうね。
「っ…何やってるの秀司、勝つんでしょ!」
「うっせ、美鶴はそこでこっちを応援してろ!!」
「……うわ、バレちゃってるし…でも、弘樹くんも頑張ってね」
「ひっ…は、はい!」
あぁぁ…弘樹睨まれちゃってるし。そういうのをオレは何とかして欲しいんだけどなぁ。
ゲームは、ほとんど辰巳vsキングといっても過言じゃない。
他の人は2人のプレーについていくので精一杯って感じだし、勝たなきゃっていうプレッシャーに結構押しつぶされてるみたいだ。
辰巳が負けるようなことは、許さないんだからな…。
「……黒蝶は、不思議な子だね」
「…何、いきなり…」
「僕は "高見澤瑛太" を知っていたけれど、君自身は知らなかった。弱くて強くて、守らなきゃって気持ちに……あ、これは秀司の言葉ね」
「オレは…オレです」
「うん、黒蝶が黒蝶であるためには…きっと秀司では出来ないこと。ずっと秀司を応援してきたけど、そろそろ潮時かな」
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