29 「っ…マジ、狼みてぇ…」 狼…な。 なら狼らしく、キバを剥いてやろうか。 睨みつけたままスッと一歩前に出、ボールへと手を伸ばした。 ……が、ジャックはその前に仲間にパスを出しちまった。 少し意外だ。 「俺は1人で勝ちに来てんじゃねぇの。クラスで楽しんで優勝って決めてんだよ」 「………それこそ意外だ」 「うっせ、お前らの応援も小さいぞーっ!」 『『いっけー2ー6!!』』 「ぜったいかぁつ!」 あ、コイツ、いい奴だ…意外と。ククッ、こんなアツイ奴むさ苦しいだけだと思ったが…T-cardsにゃもったいねぇな。 けど、力不足なんだよ、ジャックも……T-cardsもな。 「来いよ…顔だけ爽やかマリモくん?」 「っ…それいうなぁあ!」 * * * 「はぁ……あ、レイジ」 テニスの試合を終えて辰巳たちのとこへ行こうとした。 けれどその体育館の入り口に、レイジが腕組みをして立っていたんだ。 思わず身構えてしまう。 「……こんなとこで何もしねぇ」 「信じらんないし…てか、ここにいるのが信じられない」 「………」 「……ああ、シロにでもムリヤリ連れてこられた?何だかんだいって、シロに操られてるよね」 「……あ゙?」 こんな行事に、出るような奴じゃないくせに。 っていうか…オレも何、挑発してるんだろ。レイジには勝てないの、分かってるくせに…っ。 「今、何つった…」 「……ごめん、今のはいいすぎた…」 「………チッ」 素直に謝れば舌打ちだけで済んだけれど、レイジは殺気を隠すことはしない。 ……怖い、んだ。それが。 そんな自分が、情けないんだ。 オレ1人じゃ何も出来ていない。 オレ1人じゃ、こんなにも弱い。 「さっさと行け。シケた面見せるな」 「っ…そっちこそ、こんな日につまらなそうな顔するなよ!」 ダッ! ……と、それだけいってその場から逃げ出したオレ。 情けない…でも、こっちに向かってきてる辰巳を見たら、もうどうでもよくなった。 見てるだけで勇気が湧いてくる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |