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辰巳の部屋は端数のおかげで1人部屋。でもコップだけは2つある。

辰巳と……もちろんオレの。


白虎さんほどうまくはないけど、オレもキッチンに立って自分のココアと辰巳のコーヒーをいれた。

こんな時間が、結構お気に入りだったりする。



「……ありがとう」


「どーいたしまして。それで…話って?」


「そのことだけどな、瑛太にとって…ちょっとツラいもんがあるかもしんねぇ」


「オレにとって…ツラい?」


「それでも聞きたいか?……つーか…聞いて欲しいんだけどよ」


「……うん、聞く。ちゃんと聞くよ」



辰巳がそばにいてくれるから大丈夫。オレにとってツラいことでも、辰巳がその分和らげてくれるはず。


だからしっかりと頷いたら、
辰巳は真剣な目でオレを見た。

体が向かい合わせになるように少し体をこっちに向けて、手を強く握ってくれて。



………ああ、嫌な予感。



「単刀直入にいう。瑛太、お前…紫烏に狙われてる」


「し、う…?」


「陥れられようとしてる。何がしてぇのか分からねぇけど、瑛太が関係してるのは事実だ」


「あ…っ、何が、あったの…?」


「実はな…、」



全部教えてくれた。
T-cardsのジャックのこととか、レイジたちにまでオレの情報が出回ったこととか。

誤魔化されたら…なんて思った自分がバカなくらい、辰巳は全てを教えてくれた。


ああ…でも、アイツの声が耳から離れない。
蝶々、蝶々って呼ぶ声が、すぐ近くで聞こえてくる…っ。



「き、もち、わる…い」


「っ…瑛太、…瑛太?」


「た、つみ……呼んで、もっと呼んで…っ!」


「瑛太、大丈夫だ。俺が守ってやるから…瑛太、」



オレを抱き締めてくれ、背中をさすりながら何度も名前を呼んでくれる辰巳。

暖かい辰巳にすぐ落ち着きを取り戻して、我ながら情けないとこを見せてしまったと後悔する。
紫烏がいるわけでもないのに、何考えてんだか。



「……続き、平気か?」


「うん、ごめん」




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あきゅろす。
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