8
体育祭。
10月の終わりに2日かけて行われるイベント。
1日目は球技大会で、特に運動が得意でないオレとしては嫌な行事。
2日目の鬼ごっこは…どうでもいいや。狙われるわけでもなかったし。
でもそのあとのハロウィンパーティー…あんまり好きじゃない。だから、オレは体育祭が嫌いだ。
「………へぇ…楽しそうじゃねぇか」
「…そう?」
「ああ、瑛太と行事参加って考えるだけで楽しみだ」
「っ…じゃあ、オレも…」
そっか、今年は横に辰巳がいるんだ。ああ現金だな、そう思っただけで嫌いなそれが好きになりそうだ。
そんな気持ちが知らず知らず顔に出ていたのか、周りがまた騒がしかったけど。
……あ、それだけじゃない。
「よぉこくちょ…ってどこ座ってんだ」
「また来たのかてめぇ…」
((しゅ、修羅場…!))
「おい、黒蝶」
「……何?アンタには関係ない」
オレの座ってる場所。
イスに座った辰巳の左足。
辰巳が座れっていったから座った。……ちょっと、その、恥ずかしいんだけれど…。
腰には辰巳の手が回ってて、オレが体重をかけても何もいわない。というより…よくあることだったりするし。
今更怒るキングがよく分からない。
「で、何なんだ。ここまで邪魔しに来やがって」
「黒蝶に会いに来た、それだけじゃいけねぇのか?」
「ああ」
「………」
ふっ、間抜け面。
辰巳がいいよ、なんていうわけないのに。
「……今度の体育祭、勝負をしねぇか?」
「あ゙?ケンカなら受けて立つぜ?」
「まさか、ここじゃ出来ないの知ってるだろ?だから…クラス優勝で、勝敗を決めようじゃねぇか」
「……辰巳、受けるの…?」
「ん?もちろんだ。このオレが負けるわけねぇしな」
「……うわ…」
かっこいい。
笑顔でオレの頭を撫でながら勝負を受けた辰巳。
うん、辰巳が負けるわけないね。
だから余裕の笑顔でキングを見たんだけれど、どうしてこう…人を巻き込もうとするんだろう。
「こっちが勝ったら黒蝶、もらうぜ?」
「あ゙あ゙!?」
「じゃあな、体綺麗に洗って待ってろよ」
──チュ…ッ
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