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──チーンッ
「「………あ」」
『『きゃあああっ!』』
『か、灰狼様すてきーっ』
『……え、隣にいるの…』
『『黒蝶!?うわっ…結構綺麗…』』
「見せもんじゃねぇ、どけ」
辰巳がオレのネクタイに手をかけたままエレベーターの扉が開き、そこにいた人たちに見られた。
女のような甲高い声に、
オレがいると驚く声。
ああ、なんか嫌だ。
「行くぞ瑛太」
「わっ…待って辰巳っ」
『手ぇ繋いでるぜ』
『へぇー…あんな顔すんのか』
『こっちにも貸してくれよー?』
「……っ」
ニヤニヤした目。
今まで見向きもしなかった奴らの、欲情した目に言葉。
イヤらしい視線。
これなら、蔑まれた方がよかった。気持ち悪い。
……オレを見るな。
──ガツンッ!!
「………は、」
「てめぇら…コイツに手ぇ出してみろ。colors総出で潰しにくるからな」
『『ひっ…!』』
「たつ、辰巳…?」
「……んぁ?どした?」
「……う、ううん…」
呼んで振り向いた辰巳は、人を殴ったあととは思えないほど優しい笑みを浮かべていた。
そしてそのまま震えるオレの手をとって、ズンズンと食堂へ歩いていく。
オレのためにしてくれたことが嬉しい。
………でも、どうして?
人が1人殴られてるのに、どうしてまだオレを見てくるんだ…っ。
「気にすんな、ああいうのはシカトが一番だ」
「分か…ってる」
「……今までホントになかったのか」
「いったじゃん。オレは真面目に静かに過ごしてたの」
「悪かったな…注目浴びさせて。ツラかったらすぐいえよ」
「っ…あ、アンタのせいじゃないし」
そう、ただ、今までこんな一斉に見られることがなかったから気持ちがついていかないだけ。
辰巳は悪くない。
むしろ、来てくれて嬉しいんだから。
ああ、でもやっぱ嫌だ。
逃げたい、
ここから逃げ出したい…っ。
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