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「あー…無理かな。あんま長い時間空けとけないしね」
「…はぃ。ごゆっくりー…」
蓮はつまらなそうに戻っていった。午後は紅と一緒に回りたかったのだが、紅も忙しいのだ。時間を無理やり作ってわざわざ見に来てくれた。蓮は、それだけで十分救われたのだ。
残りあと少し。蓮は再び気合いを入れ、またビクビクしながら接客の仕事を再開した。
◆
『それじゃあ交代ね』
そういって午後の部の人たちが入ってきた。やっと解放された蓮は、深いため息をついて床にへたり込んでしまう。
「もう、いやや…!!」
いくら仕事とはいえ、もう男の人を相手にしたくない。触れようとしてくる手、舐めまわすように見てくる視線。思い出すだけでも気持ち悪い。
ずっと気を張って頑張ってきたため、疲労感と恐怖感が一気に押し寄せてきたようだ。自分の意に反して涙も流れてくる。
「ふっ…うくっ」
蓮はしばらく、誰にも気付かれないよう隅の方で泣いていた。声をかみ殺して、溢れ出てくる涙を拭いながら。そしたら、
「はい。お疲れ」
「ふ、ぇ…?」
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