9
部屋の前までやってきた紅は、鍵を渡して帰ろうとした。だが蓮がそれを腕を引っ張ることで引き止めた。怖くて1人で入ることが出来ないのだ。
「あの…助けて下さい…」
「へ?いや、助けろったって…。じゃ、私が仲介役してあげるから後は頑張るんだよ」
「は、はいっ…」
そう言って紅は扉を叩く。………が、全くもって返事なし。
「あれ?寝てるのか?」
「えっ、もう!?」
それは無いだろう。なんせまだ9時にすらなってないのだから。だから次はチャイムを鳴らしてみると、ようやく中で動きがあった。が、出てこない。確かに中で部屋の戸が開く音と歩く音が聞こえたのだが…。
「え、まさかの居留守!?ムカつくわぁー」
(こっ、怖い人なんやろか…)
不良を想像して怯える蓮をよそに、紅は今度は強く扉を叩いた。何回か繰り返していると、ようやく部屋の戸が開く。
「………はい?」
「ひぎゃぁあ!?」
「……っ!」
中から人が出てきた途端、蓮が奇妙な雄叫びをあげて紅の後ろに隠れてしまった。紅はその声に驚き、肩をすくめる。
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