習うより慣れろ
――トントン
「どーぞー」
「…失礼します」
「あんた…」
教室を出た蓮は、真っ先に保健室へと向かった。昨日のようにいきなり入るのではなく、きちんとノックをして入ると、紅がまた来たの?という顔をする。
「せやかて、またあの人たち来たんやもん…」
「はぁ…、まぁ座ったら?」
「でも、でもね。紅さんのクマのおかげで泣かへんかったんやよ」
「クマ?……ああ」
紅は呆れながらもしっかりと席を用意してくれ、蓮はポッケに入れていたクマを取り出した。その時に匂った甘い匂いに、蓮はホッと胸を撫で下ろす。
「それなりに効果あったみたいだね」
「んぅ…はい」
匂いを嗅いだときの蓮の表情をみて、紅はそういった。穏やかな表情を浮かべていたのだ。だが優しい言葉ばかりではない。
「でもさ、これから毎日ここに来るつもり?」
「…それ、は…」
「そうもいかないわよね」
「……うー」
確かにそうだ。出席率も進学に関わってくるのだから。でも…と、蓮がどもっていると、紅が肩を掴んでこういってきた。
「男と思うからいけないのよ。女と思って接してみなさい」
「え…どないな意味?」
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