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「おー姫様は今お帰りか?」
「ひっ!あ…のっ」
「ちょっと要、そんな言い方は怖がらせるだけですよ」
いきなりのことに少しショートしてしまい、一歩後ろへ下がるとさらに要の後ろから神が出て来た。
お止めなさい、なんていいながらも要を本気で止める様子は見られない。
「はっ、泣いちゃいますってか?昨日俺傷ついたんだけど」
「ひゃ、やぁ…!」
そういって顔を覗いてくる要に、蓮は更に後ろに下がり、とっさにポッケの中のクマを握った。
(助けて紅さん!!)
そう心の中で叫べど助けが来るはずもなく、状況は一向に変わらない。いや、変わったは変わったが更に悪くなる一方だ。また昨日と同じように、要が蓮に触れようと手を伸ばしたのだ。
「っ…あ…。けぇへん、で」
「ククッ…その顔、そそるな…」
嫌々と首を振りながら、更にクマを握る力を強める。大きな瞳には涙が溜まり始めた。デジャヴ。そして同じ事が繰り返されようとしたとき、神がその手を掴み制止させた。
泣きそうな蓮に、ようやく止めるべきだと気づいたらしい。
「…なんだよ」
「いい加減にしたらどうでしょう。いくら要といえど、やりすぎですよ」
「こいつが避けるからだろ」
「理由は知ってるはずですよね。それなのにこんなこと…ただのいじめっ子ですか、要は」
「…チッ。帰る」
そういって要は神の手をふりほどき出て行ってしまった。甘いだけが要の爺やではないのだ。ときには躾も必要である。そして神は振り返り、
「ご迷惑をかけてスミマセンでした。要も嫌われたのは初めてだから動揺しているのですよ。では、私も失礼します」
とそれだけいうと去っていってしまった。しばらくドアの方を見つめていた蓮はハッと我に返り、足早に教室を後にした…。
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