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『お、ナイスタイミング』
『え、何が?』
『ちょっとキスの見本をと思って』
『…は?』
『市川、これが恋人のキスだ。よく見とけ!』
『ちょっ…んっ!?』
手本といわんばかりに先輩は、探の前で熱いキスを始めた。始めは優しく、そして舌を口の中へ入れる。
――ピチャ…クチュッ
『はっ…んっ、ぁんんっ…ふぅ』
先輩のキスに酔いしれるその人は顔を赤くして、口の端から涎を垂らした。それを先輩は舐めとって離れる。
『これがキスだ』
「…分かった」
何も知らない探は今日からやる、とだけいい残し、蓮のいる部屋へと帰っていった…。
◆
そして夜。またいつものようにキスをしてくれる、と蓮が密かに思っていると探が近づいて来た。それは毎日やっても慣れるわけがなく、心臓が張り裂けそうなほどドキドキしてしまう。
だが…、
「あのさ、ごめん」
なぜかいきなり探が謝ってきた。蓮は小首を傾げ、どうしたのと下から探を見つめる。深刻そうな顔…一体何があったのか。
「今までのキス、間違いだった」
「……え?」
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