8 「ぁ……あんまり見ないで」 「……ぇ、あ、わりっ」 「…幸慈くんは…優しいね」 「そ?」 「うん。…ずっと、優しいままでいてね…?」 「あ、あぁ…うん」 それは、遙香が幸慈に首輪をつけたのと同じだった。あなたは裏切らないで、逃げないで、それ以上踏み込まないで。切なく縋るその瞳に幸慈は頷き、遙香は笑顔というご褒美を与えた。 「あっそうそう。その "幸慈くん" ってやっぱ止めね?」 「え?」 「慣れない…つーかなんつーか」 「………」 「ユッキーか呼び捨てで!」 「…………幸ちゃん…」 「………、まぁ遙香らしいか?」 (幸ちゃん…へへ、友達だっ) その後も少しだけ幸慈と回り、クラスの当番の時間がやってきた。遙香は女子2人と体育館の上から様子をみる係で、幸慈は入口に立つ受け付け係だ。上から下の様子をみれば幸慈が大袈裟に手を振り、遙香は恥ずかしそうに顔を隠す。 巨大迷路の方はなかなか好評で、たくさんの人が迷路の中でうろうろしていた。ギブアップする人も少なく、遙香たちはのんびりとそれを見ていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |