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「……っ」
「な…に…、痛いよ彰ちゃん…」
「何でんな…楽しそうなんだよ」
「………」
「俺はお前がいなくて狂いそうだっつーのに…!!」
遙香を連れ去ったのは、怒ってるような…でもどこか悲しそう顔をした彰鬼だった。長い髪を振り乱し、近くの壁をガンッと殴る。
今日一日中、ずっと屋上から見ていたのだ。クラスメートと楽しそうに玉入れする姿も、中庭で駿とお昼を食べていた姿も全部。自分のせいだと分かっていても悔しくてしかたなかったのだ。
「楽しんじゃ…いけないの…?」
「……そういうわけじゃねぇ」
「なら、いいじゃんかっ!もう…戻る…っ」
「っ…すまねぇ!俺は…もう、どうしていいか分からねぇ…!」
「………」
「血を浴びてもタバコ吸っても酒飲んでも……お前を忘れらんねーんだ、遙香…」
遙香はそれでも彰鬼の方を振り返ることはしなかった。裏切られてすぐに許せるわけないし、まだ自分の気持ちが揺らいでる時に返事はしたくない。自分を守るために、遙香はそこから立ち去った。
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