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 幸慈を起こさないようそっと起き上がり、携帯を持って申し訳程度についたベランダに出る。朝はまだ早く、旅館は静かだ。


──プルルルル…


『………ハル?』

「お、おはようにぃに…ごめんなさい、朝早くに」

『いや…どうしたのかな?声、枯れてる』

「っ、う…にぃにっ…!!もう帰りたいよぉ…っ、助けて、助けてよっ」

『ハル!?ハル、何があった?』


 電話越しに聞こえる遙香の悲痛な叫び。1人膝を抱えて泣いているであろう姿が目に浮かび、狛璃は焦った声を出す。


「見、られたっ…傷、見られちゃったよぉ……体もっ、いっぱい触られたし…気持ち悪いっ」

『ハル…ハル、大丈夫か?』

「もうやだよっ…、…お父さんは、どうして僕をイジメるの…っ?」

『っ──』


(せっかく治ってきてたのに…!!)


 今すぐ遙香を抱き締めたいのに、こんなときに限ってそばにいてやれない。必死に声だけで慰め、なんとか泣きやますことだけはできた。

 そこで一つ疑問が出る。





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