8 「チッ…よくわかんねぇがよ、こいつ…浅見はお前が好きなんだろ?意味なく、純粋に」 『久先輩…っ、そうだよ?僕、お兄ちゃん大好きだもんっ』 「やめろよ…っ…じゃあこの6年!…お前が生まれてからの俺の人生は何だったんだよ…」 カラン、とナイフを落とし一は大量の涙を流し始めた。涼がそっと一に近づき触れると、少し震えたが抵抗はしない。そのまま自分の中に抱き締めた。 『ふぇっ…お兄ちゃ…ごめ、なさぁ…!!』 「っ…く、そ…!」 「20年で気づけてよかったんじゃないの?」 「英士…」 「人殺す前に、自分死ぬ前に知れてよかったんじゃない?」 「俺もそう思います。…だって6年いなかったのに、ちゃんと部屋あったじゃないですか」 「うぜぇ…けどお袋と親父はいつお前が帰ってきてもいいようにって、残しといったんだよ」 京一と十夜のその言葉で、一は自分がちゃんと愛されていたんだと少しだけ嬉しくなる。今はまだ受け入れることも涼を許すことも出来ないが、周りの見方を少しだけ変えてみようと思った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |