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ただ事ではない様子に理事長は焦りだす。大きなソファーに横たわらせ、静かに様子をみる。今は苦しそうにはしているが寝ているだけのようだ。


「あいつが…一が来たんだ」

「っ──!?」

「迂闊だった。まさかここまで来るとは…」

「十夜のせいじゃない」


「……あのさ、一体なんなわけ?」

「英士、あまり…」

「……知らないのかい?」

「たりめーだろ。言うわけねぇ」


その言葉に英士たちは少し反論をして悲しそうな顔をした。なぜ、言ってくれないのか……そんなに頼りがいがないのか。結局自分たちは涼にとってそれっぽっちの存在なのか…。


「だが…こうなると教えてあげた方がいいだろう」

「はぁ?むちゃいうな」

「十夜」

「っ……」


理事長に凄まれ十夜は悔しそうに唇を噛んで黙った。そしてゆっくりと開かれる口に、そこにいたみんなはごくっ…と唾を飲む。

「これは…涼は覚えてない、ということをまず心に留めておいてくれ」


だが彼らは知らない。
涼が…このときもう起きていたことを。そしてこれから話すことを、涼が実は覚えていたことを…。

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