5 ただ事ではない様子に理事長は焦りだす。大きなソファーに横たわらせ、静かに様子をみる。今は苦しそうにはしているが寝ているだけのようだ。 「あいつが…一が来たんだ」 「っ──!?」 「迂闊だった。まさかここまで来るとは…」 「十夜のせいじゃない」 「……あのさ、一体なんなわけ?」 「英士、あまり…」 「……知らないのかい?」 「たりめーだろ。言うわけねぇ」 その言葉に英士たちは少し反論をして悲しそうな顔をした。なぜ、言ってくれないのか……そんなに頼りがいがないのか。結局自分たちは涼にとってそれっぽっちの存在なのか…。 「だが…こうなると教えてあげた方がいいだろう」 「はぁ?むちゃいうな」 「十夜」 「っ……」 理事長に凄まれ十夜は悔しそうに唇を噛んで黙った。そしてゆっくりと開かれる口に、そこにいたみんなはごくっ…と唾を飲む。 「これは…涼は覚えてない、ということをまず心に留めておいてくれ」 だが彼らは知らない。 涼が…このときもう起きていたことを。そしてこれから話すことを、涼が実は覚えていたことを…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |