5 そして顔を洗いにいって戻ってきてから、十夜は再びあの話を持ち出した。 「………諦めれたか?」 『っ…や』 「はぁ…お袋たちに迷惑かけてぇのかよ」 『だって……』 やっぱり無理。そこで十夜は最終手段に出ることにした。 「弟の俺は我慢してんのに"お兄ちゃん"はわがままだな。"お兄ちゃん"なのに」 ─ピクッ… 「…なぁ?お・兄・ちゃん?」 『ゔー…ワガママ言ってないもん!我慢するもんっ!お兄ちゃんだもんっ』 「……………言ったな?」 『ぇあっ?………あぅ…』 まんまとはめられてしまった涼。こういうときだけお兄ちゃんと呼び、涼を誘導するような話し方をするのだ。弟に出来て兄に出来ないのか、と。 そしてなんとか涼を説得することに成功した十夜は、涼を連れて食堂へ向かった。 「……あ、そうだ涼。もうすぐ夏休みだけどさ、涼はやっぱ帰るの?」 ((ヤバい…)) 『…い、いえ。今年は残ります』 英士の質問に気の抜けた、少し寂しそうな笑顔で答えた涼。その意外な答えにみんなが反応した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |