5 『もうっ、十夜ってどうしてお兄ちゃんって呼んでくれないの!?』 「こんなのに兄貴はねぇだろ」 『こっこんなの!?…僕っ…頑張ってるのに』 「あーそうじゃなくてなぁ…」 困ったものだ。好きという気持ちが涼に伝わらない以上、何回も同じことを繰り返してしまう。それに他の人でも涼をお兄ちゃんと呼ぶ人は少ないだろう。むしろ弟的存在だ。 「涼じゃいけねぇのかよ」 『だって…お兄ちゃんって呼ばれたいもん…』 「俺は涼がいいんだよ」 『むぅ…じゃあもうちょっと弟らしくしてっ』 「はぁ?まじ意味分かんねーし…」 弟らしくとは一体どういうものなのだろうか。物心がついたときには涼のことをそういう対象で見ており、つい対等に……それ以上になろうとしてしまうのだ。 「……おい…泣くなよ?」 『泣かないもんっ!次、行くよ!!』 「………………はぁ」 溜め息をついて、先に歩いていってしまった涼の後についていく。庭を2人でグルグル回りながらお兄ちゃんらしく振る舞おうとする涼。しばらく歩いていると、久と涼が初めて出会ったバラ園についた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |