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そして誕生日、涼は朝から香の部屋に来ていた。だけどどこか浮かない顔をしていて、香は嫌だったんじゃないかと不安になる。
「なぁ…どうした、涼?」
─ビクッ
『っ…あ、の…ご、ごめんなさいっ!!』
肩を震わして涼は頭を下げた。何で謝られてるのか分からない香は余計に戸惑ってしまう。
「……なぜ謝る?」
『僕っ…何も用意出来ませんでした…っ。いっぱ、考えた…のにっ、浮かばなくてっ』
「用意?」
『うぅっ…プレゼント、ないんです』
そういって涼はわんわん泣き始めてしまった。今日のために、香のために何が喜ぶだろうと必死に考えたのだ。…でも、何がいいのか全然思い浮かばなかった。
だから結局手ぶらで来てしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまったのだ。
「な、んだ…そんなことか」
『ひっく…ごめ、なさぁっ…』
「別にいい。俺は涼さえいてくれればそれでいい」
『うっうっ…ほんと、に?』
「ああ」
『よか…ったです』
涙で濡れた顔ではにかみ、香に抱きついた。その行為は理性を飛ばすのに十分すぎるもので、こんなことをつい言ってしまった。
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