8 英士が涼を抱えているため、香が先に中へ入る。理事長は何だという顔を向けるが、次に入ってきたその人に顔を真っ青にして慌て始めた。 「りょ、涼ちゃん!?なんで…涼ちゃん!!」 「あのっ!…今は気を失っているだけですから」 涼を揺さぶって起こそうとする理事長を英士が止め、涼をソファーへ横たわらせる。涙で濡れた目元が、どんなことがあったのかと余計に理事長を不安にさせる。 「何が、あった?」 「……親衛隊に、襲われました」 香がゆっくりと口を開いた。実際に見ていた訳でも話を聞いた訳でもないので、大部分が憶測だがそれでも理事長と英士は静かに聞いていた。 「多分酷いことはされてないでしょう。しかし…とても怯えていて、こちらに気付くまで時間がかかりました」 「…それはどこであった話だ?涼ちゃんは見つかったときどんな格好で、何を言っていた?」 「体育館倉庫に目隠しをされ、手を縛られていました。…出してくれ、と謝りながら叫んでいました」 「そう…か…」 話を聞いた理事長はドカッと椅子に崩れ落ちた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |