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もうこれ以上ないというほど目を輝かせ、中へ入っていく涼に海はただついていくことしか出来ずにいた。ここまで来ると海は涼のテンションについて行けないのだ。
『海くん!真っ白いうさぎさんっ』
涼が白いうさぎを一羽抱き上げ、海のもとへ近寄ってきた。うさぎは逃げることもせず、むしろ涼に懐いているかのようだ。首筋あたりをフンフンと臭いを嗅いでいる。
『ひゃっ、くすぐっ…た!ふふふっ、やはっ』
「…涼は本当に可愛いな。そいつみたいだ」
と言って海が白いうさぎを指差した。その途端、涼の動きが止まる。
『…僕は…このうさぎさんみたい?』
「え、ああ」
『真っ、白…?』
何かを求めてくるような涼の瞳。その瞳に吸い込まれそうになりながら、海は今一番に思ったことを言った。
「ああ。涼は真っ白だ。綺麗な純白。…凄く、綺麗だと思う」
まだ何色にも染まってない純粋な涼。自分は染まらずにみんなの中へ少しずつ入ってくるのだ。その人の持っている色を薄めてくれる、優しい色に変えてくれる。そんな白。
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