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だが今日はそれだけでなく、涼からお礼を言ってきたのだ。今までに香が話しかけて小さな返事が返ってくるのは、本当に数えるほどしかない。それが今日は涼から話しかけたとなると、この場にいた全員が固まってしまうのは訳もないだろう。

「あ、いや、別に…」

一番に復活した香が返事をするが、涼は自分から話しかけた事に驚き、怯えてしまったのか目を合わせようとしない。そんな様子に気付いた英士が、

「ね、ほら涼。あーんして?」

と言って涼の気を逸らした。

『ふぇっ?あ…ーん。おいしっ』

涼は何事かと一瞬分からなかったようだが、美味しそうな匂いに誘われ口元にあったスプーンにかぶりつき、味わう。その美味しさに涼の頬はゆるみっぱなしだ。

そしてそれに気をよくした英士は、更に食べさせるべく同じ動作を繰り返す。初めは仕方ないと思い、見ていた京一たちだがもういい加減痺れを切らしはじめた。

「先輩、もう自分のご飯食べたらどうですか?」

京一が英士の為に運ばれてきたご飯を指差した。涼もそれに気づき、すぐに謝り始める。

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