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「やっべー!!」

「……うるさいな」

「助けてくれ仁!」


難波の部屋に駆け込んできたのは、たくさんの参考書を持った陸だった。よほどヤバいのか『やっべー』しかいわず、難波はめんどくさそうに陸に近寄る。


「何が、ヤバいんだ」

「分かってるだろ!?テストだよっ!」

「………あぁ」

「あぁじゃねー!教えてくれっ」


机に勝手に参考書を広げ、難波を見上げる。陸の頭の悪さは理解しているつもりだったが、まさか全教科を持ってくるとは思わないだろう。難波は呆れ顔で向かい合わせに座った。


「浅見たちは?」

「ぅ゙…だってよ、あんま迷惑かけらんねーし」

「俺はいいのか」

「そんなことねーけどさ、仁だって嫌だろ?俺が進級できなくなったら」

「………」

「頼むっ…教えて?」

「っ…はぁ…その代わり赤点だけはとるなよ」

「おぅ!」


何だかんだで愛しい人には甘やかしてしまうものなのだろう。それに自分を頼ってきてくれたのは嬉しいことだし、2人きりというのもなかなかいい。そして2人は早速勉強を始めることにしたのだが…、


「どれやるんだ?あんま詳しくはねぇぞ?」

「あー…うん、全部」

「……何が分からねぇ?」

「何が分からないのかも分からない」

「…………」

「ごめんなさい」

「おい…覚悟しろよ?バカ陸」


地獄の特訓、なんてことは大げさにいってるものだと思っていた。けど、実際に経験するそれは地獄なんて言葉じゃ収まらないものだった。

基礎の基礎から分かってない陸に呆れを通り越して悲しくなり、各教科毎日1時間ずつみっちりと勉強を始めた。難波だって担当教科以外はほとんど出来ないのに、それでも参考書を読みながら教えていく。それはもう寝る時間がドンドン減っていこうとも。


唯一の救いだったのが、陸が難波の部屋に来たのが3週間前だったということ。本来ならもう少し早い方がいいのだが、それでも基礎だけはやることが出来た。


「うあ゙ー明日もうテストかよー」

「俺を巻き込んだんだから頑張れよな」

「頑張ったらなんかくれんのー?」

「そうだな…考えといてやる」

「やりっ!うし、頑張るか!」

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あきゅろす。
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